「おはようございまーす!」 次の日の朝、俺は肩から“挨拶運動週間”と書かれた襷をして正門前に立っていた。 というのも、前代未聞の生徒会長交代の所為で信用を失ったりとマイナスイメージが多いんじゃないかと思ったからだ。 「おはようございます、新生徒会長さん」 こうして挨拶をしていると予想以上に挨拶を返してくれる人が多くて、俺の心配は杞憂だったのかもしれないと思う。 「おはようございまーす!」 俺は、嬉しくなって更に大きな声で挨拶をする。 やはり俺とささらの一件は全校に知りわたってるってことだろうか? 照れるなあ……。 「あ、タカ君!」 遠くから駆けてくる見慣れた顔が3人。 このみと、タマ姉と雄二だった。 「おはようございまーっす!」 通りすがる生徒に挨拶する。 そんな俺の姿を3人は不思議そうに眺めていた。 「タカ坊、一体これはどういうこと?予定にはなかったはずだけど……」 「貴明、そうやってお前はまたフラグを立てようとして……!」 フラグって……大体、俺はささら一筋だって。 …恥ずかしいから言わないけど。 「いや、ほら、やっぱささらやタマ姉を超える生徒会長になるにはこれぐらいしないと」 超えるというのはちょっと言い過ぎたかもしれない、と言った後で思う。 だけど、俺は生徒会長という、ささらが勤めた立派な役職に就く以上、それぐらいの姿勢でなければいけないんだ。 「タカ君、このみも手伝うでありますよ!」 そう言ってこのみはカバンを門の隅っこにおいて、俺の隣に立つ。 つられたようにタマ姉と雄二も俺とこのみに並んで立つ。 「よっしゃ!これで俺も乙女のフラグ、ゲットだぜ!」 「何言ってんの、そんな下心丸見えの挨拶なんかされても朝から気分が悪くなるだけよ?」 タマ姉のストレートな一言に雄二はノックダウンしていた……。 「ありがとう、皆……」 「何言ってんの、これも生徒会の仕事よ、会長さん」 こうして、俺達生徒会役員4人での挨拶運動が始まった。 「「おはようございまーーす!」」 本当に俺はいい仲間を持ったなと心から思った。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 昼休み。 俺はすぐに生徒会室に向かい、ロッカーから昼食を取り出す。 カロリービスケットとヨーグルトだ。 「あら、いつも早いわね」 「タカ君早いでありますー」 そうしてすぐにタマ姉、このみ、雄二といつもの3人も集まる。 「なんだ、貴明、またカロリービスケットかよ」 そう。 ここ最近はずっとカロリービスケットとヨーグルトな生活を送っている。 いつもならタマ姉が健康によくないだとか、しっかり食べなさいだとか言うのだけれど、今回だけは何も言わなかった。 「うん、まあ、慣れればこれも美味しいよ、十分」 「タカ君、それ以上痩せてどうするの?」 確かに、ここ最近カロリービスケットとヨーグルトしか食べてないので(夜はもちろんちゃんとした食事だけど) 体重が結構減った。 ……ささらも実はかなり低カロリー摂取だったんじゃないだろうか? 成人男性の1日の目安のカロリー摂取量が1800kcalだけどささらと俺は1200kcal前後しか採ってないな、多分。 「まあまあこのみ、タカ坊も何か思うことがあるんでしょ。それを問うのは野暮ってやつよ」 「ふーん…」 このみは頭にクエスチョンマークを浮かべている。 タマ姉だけが俺の思考を読んでいるような、そんな感じがした。 「それじゃ、言ってくるよ」 俺はそういって生徒会室を後にしようとする。 「おいおい、行くって何処にいくんだよ?」 雄二が怪訝そうな様子で言う。 「何って、見回りだよ、見回り。この時間はゴミのポイ捨てとか多いしね」 俺はそういい残して生徒会室を後にした。 後から 「タカ坊、頑張りすぎね」 という声が聞こえたがそれは聞かなかった事にする。 -------------------------------------------------------------------------------------- 「全く……」 案の定、見回りをしているとベンチの下に空き缶やら、菓子パンの空き袋やらが転がっていた。 自分のゴミぐらい自分で処理してくれよ……。 そんな事を思いながらゴミを拾い集める。 持って来たゴミ袋があっという間にいっぱいになってしまった。 うーん……週に1度運動部がボランティアでゴミ拾いをしてくれてるけどこれは考えないといけないなあ…。 俺は早速、放課後の生徒会会議の議題にすることにした。 ------------------------------------------------------------------------------------------- 「というわけで、昼休みのゴミのポイ捨てが多いのは外にゴミ箱が設置されていないのが要因の1つなんじゃないかなあと思うんだ」 放課後、皆を集めて早速昼休みの現状を伝え、提案としてゴミ箱の設置を提示してみた。 「なるほど、確かにそうね……ゴミ箱の設置はいいとして、そのゴミは誰が捨てるの?」 さすがタマ姉、ずばりと問題点を突いてくる。 しかし俺も、それについては考えてはいたのだが、どうしたのもかと悩んでいたのだ。 「設置したらゴミを外のゴミ箱で捨てる奴も増えるだろうしな」 「そうだねー」 雄二の意見にこのみが頷く。 確かに、単純にポイ捨てされてるゴミが新しく設置したゴミ箱に捨てられるだけでなく 今まで中のゴミ箱で捨てられていたゴミが外に捨てられるケースも考えられる。 「ちなみに、今校内のゴミ箱のゴミ捨ては分担して掃除当番がやってるけど、流石にこれ以上負担させるのは無理だと思うわよ?」 タマ姉が言う。 確かに、校内各地にあるゴミ箱のゴミ捨ては公平にクラスで分担して捨てることになっている。 それを更に外にあるゴミ箱も格クラスに振り分けて捨ててもらうというのも無理だろう。 仮にそれでいいとしても圧倒的に外の設置ゴミ箱数のほうが少なくなるため、分担の公平性が欠けてしまう。 「なるほど、難しいね」 素直にそう思う。 俺が安易に考えたこのゴミ箱設置案も難しい問題が待ち受けていた。 「まあ、この議題は明日までに各自考えをまとめておくってことにしておきましょ」 タマ姉の一言で、この日は解散となった。 さて、この問題、どうするべきか……… --------------------------------------------第6話へつづく 『子供の心/大人の心』第5話