今日は登校日。 終業式のも終わりあとは生徒会からのお知らせだけになった。 『え〜、現在、私、向坂環が生徒会長を勤めさせていただいてますが、 私よりもすばらしく、そして皆様も信用できるであろう人に今日付けで生徒会長の座を譲ろうと思います』 会場──体育館がざわめく。 それもそうだろう。 一度決まった生徒会役員──しかも生徒会長が任期を前に代わるというのは前代未聞だ。 『ほら、タカ坊、挨拶して』 そうしてタマ姉にマイクを渡される。 そう──俺が決心したこと、それは生徒会長──ささらの居たイス(席)を引き継ぐこと。 これはささらと付き合うようになってずっと後悔していた事なのだが 何故、あのとき副会長を断ってしまったのか。 後に雄二から言われた『求められている事が大事』だという言葉がずっと響いていたのだ。 でも今は違う── 胸をはって言える。 俺はささらを引き継いだ、立派な生徒会長になれる。 いや、なるんだ。 そして俺は意を決してマイクを受け取る。 「え〜、というわけでこの度、向坂環生徒会長に換わりまして 生徒会長を勤めさせていただく河野貴明です! 前生徒会長、久寿川ささら先輩のような立派な生徒会長になれるよう頑張りますので 応援のほど、宜しくお願いします!」 そして俺は頭を下げる。 すると会場から歓声があがった。 ----------------------------------------------------------------------------------------- 「それにしてもねぇ・・・」 その日の放課後、タマ姉が呟く 「はいこれ、生徒会長の仕事に関する資料ね。」 そういってタマ姉は俺にダンボール箱を渡す ・・・しかしこれはすごいな。 「それにしてもよ〜」 雄二が後頭部で手をくんで納得がいかない表情でいう 「どうして生徒会長なんていう、くそ面倒くさい事を自分から譲ってくれだなんていうかねえ」 そんな雄二をみて 「それはね、ささら先輩と何か繋がっていたい・・・タカ君はそうおもってるんだよね?きっと」 うっ・・・ このみ、お前を今まで妹のように接してみてきたが、ちゃんとした“女の勘”なんてものを持ち合わせてたんだな・・・ 「そうよ、雄二もそれぐらいする気になるような恋をしたら?」 タマ姉がちょっといじわるに言う。 「待った、タマ姉それは──」 俺が制止したにも間に合わず、“ソレ”は動き出してしまった 「俺だって大きい恋をしたさ!ああ、もう、それはもう大恋愛だったさ!!」 雄二が泣きながらタマ姉の肩をゆする さすがのタマ姉もちょっと困惑しているみたいだ 「ちょ、雄二、わかったから落ち着きなさいって!」 「だがよぉ、姉貴、姉貴だって俺の気持ちはわかるだろう?」 「・・・っ」 タマ姉が珍しく口ごもる ・・・・どうしたんだろ。 「そうさ、俺達の大恋愛レボリューションはこのラブコメ男のせいで・・・!」 そう、雄二はささらに恋をしていた。 それなのに雄二は“ささら先輩が求めているのはお前なんだよ”って背中を押してくれたんだっけ・・。 「まあ、本当に雄二、タマ姉、このみには感謝してるよ。」 「特に雄二、お前だってささらの事が好きだったのにあのとき俺の背中をおしてくれて・・・ 正直、あのときお前が俺の背中を押してくれてなかったら今の俺、ささらはなかったとおもう。 その、本当にありがとうな・・・」 「バカヤロウ、俺はただささら先輩がすきだから、笑っていてほしいから そのために俺的にはハッキリしないダメ男だったが、それでもささら先輩はお前をさがしてたんだよ だからささら先輩にはお前しかいないって思った。それだけだよ」 ・・・。 正直、ささらの件で雄二がささらにアピールしていた数日間。 俺は雄二のことを避けていた。 心のどこかで“もうあいつとは親友なんかじゃない”って憎んでたのかもしれない。 でも、あいつは真剣になって、本当にささら先輩の事が好きで それでも諦めて俺に道を示してくれた。 ・・・この借りは一生返せそうにない。 「それにまあ、俺は過ぎた恋愛なんて気にしないからな。 お前とささら先輩は本当にお似合いだし、そんな2人だからこそこのみや姉貴も快く祝福してやれたんだぜ?」 「ちょ、ちょっと雄二!」 「ゆ、ゆうくん!」 何故か2人があわてて雄二の口を抑えている。 「さ、ほら、生徒会長さん、いつものお願いするわね」 そういって俺を追い出すかのようにタマ姉がホウキとチリトリをよこす。 そうだな、ささらがしてたように俺も校門前の掃除といきますか。 ------------------------------------------------------------------------------------------- 全く。 「なんでこう、わざわざゴミ箱が設置してあるのにゴミ箱にすてないかねぇ・・」 校門前の掃除を始めてみれば落ち葉などはともかく 明らかに生徒が捨てて行ったとおもわれるゴミが多いのなんの・・・。 ポテチやらジュースの空き缶やら・・・。 というか、歩きながらポテチなんか食うなよ・・・。 ──でも 「これを、毎日文句も言わずにささらはこなしてたんだよな・・・。」 そうだ、だとしたら俺もささらのように、いや、ささら以上にがんばらないと。 “『貴明さん、ちりとり』” 「ああ、ありがとう、ささ──」 なんてことだろう。 ささらと同じ位置にたって、同じ事をして── 居る筈のないささらの幻像(すがた)、声まで俺は感じてしまった。 「・・・ああ、俺はこんなにも」 彼女の事を愛しているのだと 心から──想った。 何処からか彼女の臭いがするような── そんな夏風が俺の頬を撫でた──。 --------------------------------------------第5話へつづく 『子供の心/大人の心』第4話