無銘三代目

さくらの道

『後編:桜の道』 魔法使いの使い魔になった私は、散らない桜と共に生きた。 ある時は 魔女の使い魔は、やっぱり猫よねという意味の分からない理屈で 猫に変化されたり ある時は、猫だからねずみを食わされそうになったり、 またある時は、雄猫に求愛されたり 悪がきに襲われたり 川に落ちたり、助けてらったり そしてさくらと初めて出会ったり、朝倉 純一に出会ったり・・・・・・数え切れない程の思い出をこの散らない桜と一緒に歩んでいった。 そして あの人の最後 人間は、死ぬという当然の事すら忘れていた。 死なないという夢を見ていた。 でも あの人は死んでしまった。 そして、私はどんな人間も死を逃れることが出来ないという現実を思い知らされた。 心に穴が開いて気がした。 それから、私はあの人が残した魔法 そう、散らない桜・・・ 私は、それにあの魔法使いの面影を見て、思い出に慕って生きる事にした。 うたまるとして・・・ それは、きっと恒久に続くと思っていた。 そして、あの日 私は、さくらが桜を散らしたことを知った。 もう私は大丈夫だから・・・・・・・・・さくらは、そう言っていた。 ・・・戻りたくない・・・コロセ・・・失いたくない・・・私 ・・・・・・殺したくない・・・コロセ・・私を・・・消さないで ・・・さくら・・・コロセコロセ・・・なんで、桜を枯らしたの その時 私の心にあったのは、光ではなかった あれは、さくらのための魔法 それは、それは分かっていたのだ。 でも、もう遅かった もう私の心に闇が戻っていた。 そして、私には死に神の鎌だけが残された。 ・・・コロセ ・・・・・・殺せ それが、私という存在なのだから 私は、死に神だから・・・ 人の命を奪い、幸せを奪うモノだから・・・ ・・・なんだよ、それ 「え」 死に神だからって__ 「人の夢の中に入ってこないで!!」 「・・・どうして、夢の中に」 目を閉じたまま 私は、そう呟いていた。 鎌を握る力が、気づかない間に入っていた。 ・・・どうして、あの男は夢が覚めた時 私同様に、魔法が解けているはずなのに その瞬間 私は気づいた。 この冬を迎えるこの時期、香るはずのない匂いを 「サクラ」 瞼を開けた死に神の目には、視界いっぱいのピンク色の花が目に焼きついた。 カチャカチャ 鎌が鳴った。 『コロセ』 「それでも、もう私は死に神・・・でしかない。」 ドクン 死に神の中の闇が、大きく鼓動した。 ・・・ソウ、オマエハシニガミダ 悲槍な顔した。その男は、深い眠りから覚めた。 そして 桜が咲いているのに気づき、置手紙を読んで それで、男はさっき見た夢が現実だと理解した。 その手紙には・・・ 一人の少女の悲痛な思い 願いが書いてあった。 男は、その手紙を読んで 草木も眠る夜の街を、男は走った。 少女の願いを叶える為に 少女を助けるために 「お兄ちゃん・・・・・・」 私は、名も泣き桜 この島の中で、もっとも大きく そして、魔法が始まった桜 私は、その桜に手を添え立っていた。 魔法・・・それは、神の奇跡の事じゃない。 人が起すもの だから 「・・・お願い」 だから 「助けて・・・」 その声は、咲き誇った。 花のざわめき音と共に・・・ そこは、全てが始まった場所 私が、あの人の魔女になった土地 私に夢をみせてくれた所 その土地は、桜が散らない。 あの醜い姿を晒さない。 だから、夢はいつまでも終わらない そう、思えた場所 でも、夢は終わった。 私の夢はもう終わった。 終わってしまった。 __________ザリ 「・・・はぁはぁ、見つけた」 私は、その言葉に振り返った。 そこには 「よぉ、うたまる」 この島の中で一番大きな桜 俺たちにとって、否、さくらの夢が終わった場所 もう散ってしまった筈の桜は、今狂い咲き 一面をピンク色に染まっていた。 その中で立っている。うたまるの陶磁器のように白い肌が、綺麗だった。 「・・・・・・・・・」 うたまるは、なんの感情も浮かんでいない瞳で俺を睨んだ。 「まったく、探したよ」 俺は、そう言って一歩ずつ、うたまるに近づいた。 「無駄。死を克服できない人間に、私は殺せない」 「殺す気なんてない!!」 俺は、自分でもびっくりする大声で、恫喝を上げた。 「じゃ、何しにきたの?」 俺は、その言葉にくっすとなぜか顔が笑った。 まったく・・・どうしても、こいつを許せないなんて思えない 「お前を、救いに来たんだ」 そう言って、目を開き 子供の様に、涙を流さずに心で泣くお前を・・・ 「え?」 私は、その言葉に茫然とした。 ナニヲイッテイル? ナニヲイッタ 「・・・・・・・・・・・・・・・意味が分からない」 ナンデ、コノオトコは笑ッテイル ドウシテ 「前提が違うのよ」 「・・・・・・・・・・・・サクラ?」 なんで、サクラがココニ イヤダ ミナイデ 「うたまるは、『死に神』なんかじゃない。だから・・・ イマノワタシを見ナイデ 「『失せなさい』」 その言葉に、私は脳天に雷が落ちたかのような衝撃を受けた。 そして、私の心は完全に闇に取り込まれた。 「うたまるを返して」 ________________________コロシテラル ナンデ、私ガ殺サレナイトイケナイ ニクい ドウシテ、私ガシナナイトイケナイ イナナカッタノダ モウスグ モウスグ 私ハ幸セニナレタノニ 殺シテヤル 殺シテヤル オ前タチヲ 幸シナ前タチヲ 呪ッテヤル 呪イ殺シテ。ヤル 『コロシテヤル、皆殺シニ、私ハ幸セニナレナカッタノニ』 空気が一瞬で変わっていく。 否 空間が覆いつくされた。 憎悪という闇に 「なんだ、あれ?」 「あれが、死に神の正体、うたまるに憑いた悪霊・・・」 「・・・あれが、ことりを」 「うん。あれが全ての原因なんだよ」 死に神の体から青色の陽炎がふつふつと湧き出す。 「うたまる!」 死に神の体がグラという音を立て、傾き地面に落ちた。 『ソウダ。オマエタチモダ。ワタシノ目の前デミセツケラガッテ』 そして、青の陽炎だけがその場に残った。 まるで、うたまるの魂が抜け出したかの様だった。 そして それは、空気中で形となしていく。 体中に何千という、切り傷と所々かけた体。 まるで、継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみを無理やりに繋ぎ合わしたかの様な姿だ。 「オマエガ、ことりを・・・」 「アッハハ、アノ女オモシロッタゾ。オ前ガシヌ代ワリニオ前ヲタスケテヤルト言ッタラ、涙流シナガヤメテクレトナキワメキヤガッタ」 「てめぇ」 だから、あいつは何も言えなかったんだ。 俺を死なせたくないって・・・ 「大丈夫。なんで『さくら』が、また桜を咲かしたと思うの?」 「さくら?」 あの怨霊を、ぶん殴る為に踏み込もうとした。 俺を止めるかのように、さくらが俺を手で制した。 「ほら、来たよ。死を狩るものが」 その声は、さくらではなかった。 それは、遠い昔 俺に、魔法を教え 孫の為に、散らない魔法のさくらを咲かした人の声に似ていた。 ___ 刹那 そのモノは、舞い降りた。 圧倒的な■を纏いながら 『やっと、見つけたよ。『暁 香子』『斉藤 杏子』『菊池 響子』『矢野 恭子』『田中 鏡子』』 それは、まるで月の様に孤を描き、天空を飛ぶ鴉の様な禍々しい鎌を握っていた。 マントの間から見えるその姿は、全てを威圧する目と漆黒でも映える黒き瞳を持ち、青白い肌、妖艶的な雰囲気も醸し出す大人の女性の姿をしていた。 だが、それは見た目に過ぎない。 それは死に神であった。 どうしようもないほど、死に神であった。 そう魂が、叫んでいた。 「逃げろ」と___ そして 『この桜に残された残留魔法で、この私を召喚するとは・・・たいしたものだ』 その鋭利な刃物、氷の様な冷たさを合わしたかのような声が、響くと同時に 憎悪に覆いつくされていた空間は、死という概念によって『凍った』 「っぅう____」 それが、舞い降りた瞬間 俺は、背中をナイフで抉り抜かれた様な錯覚に陥り、気づいたときには膝が地面に付いていた。 まるで、殺され・・・否、死んでいく様な・・・・・・魂が抜けていく様な それは、まさに死という存在 近くにいるだけで、魂が吸い尽くされていく。 そんな錯覚に陥っていく。 『礼を言うよ。『魔女』』 カツンカツン 『後は、任せな』 そのモノは、まるで祈るように 『死を受け入れよ。生なきものよ』 『フザケルナ、ワタシハスベテニフクシュウヲ』 謳うように 『なぜ、気づかない。お前たちが殺してきた人間にだって、幸せになりたかったという事に』 舞うように 『反省して来い、煉獄でな』 鎌を一閃した。 『ギギャァアァァァアァアアアアアアアアアアアアア』 『はい、おしまい』 そのモノは、それだけを言い 亡霊は、最後の断末魔をあげた。 『ふん、本来の恨みを忘れ『嫉妬心』で、殺す愚か者に煉獄など甘すぎたか?』 そして、死に神はその陶磁器の様な顔に月の様な唇の端を吊り上げた。 まるで、全てを侮辱するかの様な笑みだ。 「うたまる!」 唖然としている俺の横をさくらが走り、倒れている。うたまるの側に走っていき。 さくらは、何度もうたまるを揺さぶっていた。 その顔、その声、その雰囲気、その動き その中には、もう魔法使いの面影はなかった。 『うたまる・・・・か』 死に神が、そう呟き 鎌を天に掲げて、円を描くように振るった。 天に光の輪が、生まれ 円から、目を潰すほどの閃光が奔った。 俺は、そのあまりにも強い光に思わず目を閉じた。 その瞬間 俺の意識は、闇に落ちた。 ただ、最後に見た。死に神の少女が笑っている気がした。 さっき見た、侮辱の笑みではなく月の光の様な優しい笑みを ただ、ふと思った。 俺は一体、なんでここにいるのだろうかと・・・ なにも出来ない 死を恐れ、気絶しているこの俺になにができるのだろうか? ただ、ただ俺は夢を見た。 闇しか見えない・・・これが、夢だと気づくにはそうかからなかった。 体が動かない 耳も聞こえない 指一本も動かせない ・・・ただ、文字だけが頭に『響いた』 __さて、説明させていただこうか 若き、魔法使い? といっても、私が一方的に話すだけなのだが 君たちは、あの子を死に神ではないという様に 言っていたが、あの子は死に神だ。 まだ、若く死に神として知恵も力も弱く 狩る所が・・・ 逆に、怨霊に憑い殺されてしまったが。 なにが、憑いたのか?     それはな。 8年前 ある殺人事件に遡る必要がある。 キョウコという名をもち、結婚間際の女性を狙った連続殺人事件 動機は、語らないが・・・なぜなら そんな事は、今回の事には関係ないから ふむ?遡るといっておいて、それだけなのはどうかと思う? まぁ、気にするな ただ大切なのは、その犯人は被害者を埋めた桜の木で首吊って自決した事 さて・・・血に濡れた桜 それが、何を意味するかわかるか? 桜は、元々まじないに近いものがある。 そこで、告白すれば必ず叶う そこで、再会を誓ったら必ず叶う など 幸せのまじないである事が多い でも、まじないを漢字で書くと 呪いと書く つまり、のろいとまじないは同じだという事だ。 神=紙に宿るように まじないがのろいになる事がある 強い思いは時にして、不幸を呼ぶように 言っている事が分かるか? 例えば 殺された人間が埋められた場所の桜が、そう言う桜であったなら 願いが叶う場所 幸せになれた善の思い そこで死んだ 幸せになれなかった悪の思い それが螺旋の如く絡み合い ある呪いを作ったんだ。 人の気持ちが作った呪い それが、本来一方的に狩られるだけの 死なない存在を、打ち滅ぼしてしまった。 本来なら、それはそれだけの話だった。 死に打ち勝っただけの話だ おっと、相手は元々死んでいたから正確ではないな。 だが、これだけは真実だ。 死に神は、あるものと約束していていな。 必ず戻ってくるという・・・ まぁ、それが今となって正しいかどうかは知らない。 だが、その約束を桜は叶えた。 そして、『うたまる』は甦った。 出会いと 再会と 愛と 憎しみと 復讐の誓いを果たす為に まぁ、悪霊が復讐する殺人鬼はとっくに死刑に処されているがな それが、全ての原因だ。 悪霊の標的を失った怨念は、標的を求め ある待遇にいる人間を呪い殺していった・・・ あるものとはなにか? それは、恋人・・・幸せな人間を標的にしたのだ。 ぽん(両手を合わせ叩く音) さて、お話はこれで終了だ。 ・・・そういえば、お前さっき言っていたな? ・・・・・・何も出来ない自分とくだりの事だ。 それは、違うぞ。 お前は、今からヒーローになってもらう ・・・濃い闇が晴れて行く 一点の光なき闇の中に光が見えた。 「・・う・・・ま・・・・・うた・・・・うたま・・・・」 声が聞こえる。 懐かしい声 嗚呼 やっぱり、貴方が私に光を与えてくれる そして、私は目を開けた。 そこには、一面の桜吹雪とあのころと変わらない魔女 ・・・・・・・・・変わらない? 「うたまる!」 「・・・・・・・・さくら」 なんだ、違う・・・か そうだった、死んだ人間は、生き返りはしない。 そんな事、分かっていたのに なにを 「さくら・・・私を殺してください」                  バシィィン 刹那 私の頬に痛みが走った。 「どうして・・・」 さくらの頬に、涙が伝う。 どうして? 「そんなこというの」 だって、私は 人を殺したのに 「例え、私の意志がなくても、私は___ バシン また頬を殴られた。 ・・・なんで、私は、死んで当然なのに 「私に貴方を背負えって、言うの」 ____人を殺すということは罪を背負うという事 人が生きるはずだった幸せを奪うのだから 魔女が昔言っていた言葉が浮かんだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだね」 私は、ノソと立ち上がった 自殺する気持ちは浮かんでは来なかった。 自殺する事なんて出来ない 自殺は、逃亡 罪から逃げるという事 だから、私は自らを殺すことが出来ない。 そう、魔女が言っていたから・・・人殺しに自殺など言う逃げはない 罪を背負って、一生、殺されるか、命が尽きるときまで 逃げることは出来ない。 でも、私は殺せないから・・・死なないから、一生この罪を背負うべきなのだ。 それが、私の灰色の道なのだから・・・ 「結局、私は全ての罪を背負うしかない・・・白河さんを殺してしまったよう 『ああ、その娘なら大丈夫だぞ』 私は、声がした方向を向いた。 そこには、偽者であった。 私なんかと比べようがない位、どうしようもない死に神が、妖艶な笑みを浮かべていた。 「え」 『白河 ことりに傷一つついてはいない。』 「え」 私は、その言葉を理解できなかった。 だって、私は確実に始末した筈なのに 確認だって・・・していなかった。 私は・・・さくらに詰問され、逃げてしまったのだから 助かる筈がない・・・そう思って 「・・・でも、生きている筈が」 『あのな、死に神は死ぬべきではない者は、傷ひとつ負わせられない・・・とだいぶ前に『上司』が決めただろうが。無駄な殺生はしてはならぬ・・・って、そうかお前がいなくなった後の事から知らなかったのか、俺たちはノルマ以外の人間に傷一つ負わせる事が出来ないって』 「何を言っているのですか?うたまるは死に神じゃ・・・」 と、これはさくらだ。 さくらは、驚愕に満ちた顔で死に神にそう詰問した。 『お前は、元々桜に宿った亡霊を狩ろうとして、逆に憑い殺された死神だろうが?』 死に神は、断言した。 その言葉の中に、嘘などなかった。 ただ淡々と真実を語っていた。 例え、私がそんな事覚えていなくても、それは真実だと分かった。 「・・・でっでも」 さくらの声は、震えていた。 それに呼応する様に 骨で出来た鎌が、かたかたと震えた。 『死に神であるこの私が言っているんだが・・・はぁ、もういい、帰るぞ』 そう言い、死に神は私に手を差し伸べた。 「「え」」 『いや、あのなぁ、おまえなぁ。一度は『死んだ』とはいえ、死に神なのだぞ。死に神が人間と暮らせるはずないだろう』 刹那 私は、理解した。 そう私は、死に神・・・かどうかは、わからないけど、でも私がさくら・・純一・・まして、ことりと同じ場所で・・・暮らせるはずがない。 だって、私は、私の道は灰色の道だから 希望と幸せに満ちた、『さくら』の道とは違うから 「いや」 さくらが、私の背中を抱きしめた。 「え」 『・・・・』 「うたまるは死に神じゃない・・・私の大切な友達です」 私を抱く、手の力が強くなって痛い。 くすと、私は思わず笑みを浮かべた。 嗚呼 『・・・決めるのは、お前だ。その子と一緒に暮らすか、それとも』 この痛みは、決して忘れない あなたの暖かは忘れない だから 「私は・・・」 __それだけで、私は幸せです 「死に神で__ 「ざっけるんじゃねぇぇぇぇぇ!」 「・・・お兄ちゃん?」 「っ・・・」 「夢の中で言っていたじゃねぇか?失いたくないって、誰も殺したくないって思っているんじゃねえのかよ」 恫喝が闇の中に、響く。 まるで、闇を晴らす暁を招く鐘を突く様に 死に神__うたまるの心を打った。 立ち上がり、まっすぐな瞳でうたまるを見つめる、純一の姿はまるでテレビに出てくるヒーローのようであった。 「ふっふざけているのは、貴方です。どうして貴方はそんな風に説教できるんですか?私は貴方の恋人を___ 朝倉 純一という男は、どうしようもなく苛立っていた。 それは、容易に分かった。 痛い程、伝わってきた。 この憎悪や死によって凍ったこの空間を、怒りで溶かしてしまったから どうして そんな顔をするの? 怒っているの? 私は、あなたの大切な人を奪った・・・奪おうとしたのに 「お前がやった訳じゃねぇだろ。好き好んでやっていた訳じゃねぇんだろ」 「でも、私は死に神なんです。貴方たちと一緒にいられないんです、なんでそのことを理解できないんですか?」 「ならなんで、泣いているんだ」 「え」 「お前はただ、逃げているだけだろ」 うたまるは、自分の頬に手を当てた。 頬に伝わっているのは・・・・・・・・涙 どうして、私は 「悲しくなんてないのに、悲しくないのに・・・」 泣いているの 本当に悲しくなんてないのに 「うたまる」 さくらは、小さく呟いた。 その言葉はうたまるにしか聞こないほど、かすれた声だ。 その声に、うたまるは一瞬だけだが思考を停止した。 「・・・・・私は、悲しいよ」 「うたまるがいなくなったら、悲しいよ」 「っ」 一瞬、ドクンと胸が鳴った。 どうして、そんな事いうの? 「だっだから、なんです。わっ私は________ 刹那 私の脳内に、ビジョンが頭を過ぎった。 今までの記憶 あの幸せの夢 さくらと過ごした、騒動しくも楽しい思い出が走馬灯のように思い出した。 傍観だけでも、楽しかった日常という幸せ。 寂しくなんかない・・・悲しくなんてない。 その思い出を一生、心に思い続ければ ・・・・・・・・・・・・・・でも ・・・・・・・・許されるなら 「私は、まだ幸せ(ココ)にいたい」 刹那 一斉に、桜が散り、うたまるという少女は泣き崩れた。 『・・・・・・涙には、二種類あると聞く』 死に神が、愚痴るように呟いた。 それは愚痴というには、少し違った。 まるで、お菓子を買ってくれなくて拗ねる子供の様な口調に似ていた。 『忘れるための涙。前に進むための涙だと』 すーと、死に神の体が透けてく。 魔法の桜によって、この島に呼ばれた死に神は、桜が枯れた=姿を保てなくなったのだ。 『お前の涙が、もし前に進む為の・・・・・・灰色の道ではなく、この桜色の道を歩みための涙なら 生きてみよ 生きて、貴様の罪を背負って__」 その言葉を残し、死に神はその姿を完全に消した。 跡に残されたのは、地面を覆いつくすピンク色の絨毯とまた倒れた一人の男 お互いの存在を確かめるように、抱きしめあう二人の少女。 そして、りん、りりん 鈴の音だけがそこに残された。 エピローグ の前に 閑話休題 「ありがとう・・・おにいちゃん」 「へ、なにが?」 「あのとき、うたまるをとめてくれて、やっぱりお兄ちゃんは、ヒーロー(救う者)だよ」 「え、そんな事言ったけ?」 「え・・・死に神として生きるかという選択を求められた時・・だよ」 「ああ、あの時か?」 「うん」 「あれ、俺じゃないぞ」 「へ」 「いや、あの時、死に神に体貸してくれって言われて」 「・・・・・・・・・・は?」 「いや・・・気絶していた時、死に神に話しかけられて体貸せって・・・もしもし?」 「・・・はぁ・・・・・・・・最初から、そのつもりだったんだ、あの人」 この世のどこかにある宮殿 そこは、黒で統一され 灯火の光だけが、そのモノの 『くっくく』 笑みを照らしていた。 『まったく、流石あの魔女が、魔法を教えた者達だ。なかなか楽しかったよ』 その声は、宮殿の中に静かに響いた。 『なぜ、人は甦るか?・・・それは、同じ人生を繰り返すわけでも、前のカテゴリーに執着する訳でもない、不幸になる為じゃない・・・答えは、ひとつだろうが・・・なぜ、わからないのだ』 そして、そのものは、これから狩りに行く。 自殺した人間の事を考え、憂鬱そうに顔を顰めた。 『本当は、戻って欲しかったけどな・・・・・・まぁ、幸せになれよ。我が娘よ?』 ガチャァン そのものは、鎌を握り締め カツンカツン 闇に消えた。 閑話休題終了 エピローグ 「・・・なら、ヴァールに誓って」 「ヴァール?」 「北欧神話に出てくる、誓約の女神。誓いの神様です」 そう言って、ことりは、静かに微笑み 小指を突き出した。 俺は、小指を絡めながら 「もう二度と、悲しみを隠さない。俺たちは支え合って生きていこう」 「・・・はい」 「俺たちは、死ぬときも一緒だ。」 ことりは、頬を赤らめながら 「なんか、結婚式みたい・・だね」 そう言った。 ことりは、薬指に嵌った指輪(二千円)を微笑みながら見つめた。 「そうだな」 俺は、そう言って赤くなった顔を見られたくなくて、急いで今からいく道を走った。 ことりの腕を掴みながら 「うわ。はっはやいよ、朝倉君」 俺は、その声を聞こえないふりをして、葉が完全に落ちきった桜並木を駆け抜けた。 照明に、下敷きにされたにもかかわらず奇跡的に無傷だった少女を私は、眩しそうに見つめた。 ___りん、りりん 首につけた、鈴が揺れてもいないのに鳴いた。 「うたまる〜」 私は、声の主を探した。 「あ、いたいた。うたまる、突然走るからびっくりしたよ」 さくらは、額にうっすらと汗を浮かべていた。 きっと、先に歩んでいった。 私を探して、その小さな足で走ってきたのだろう 私は、ごめんなさいと『鳴いた』。 「じゃ、行こうか?うたまる」 「にゃ」 ____私には、わからない 今の私が選択した道は、正しいのかわからない けど、私は今を生きている 胸の鼓動が、ドクンドクンと動いているのだ。 だから この桜の道を、ただまっすぐに、一生懸命に生きていこう それが、私が歩いていく道 傍観者の道 でも 「にゃって」 「ごめん、なさい」 ____今度は、傍観者ではない 私は、さくらと一緒に そして みんなと一緒に 「明日から、学校なんだよ。大丈夫?」 「純一と同じクラス・・・さくら、担任だから大丈夫」 そう言って、私は微笑んだ。 ____この桜色の道を歩んでいく 夢が覚めないことを 覚めても、目の前の道が桜色である事を 祈り続けよう だから、私はこうして一歩この道を歩んでいこう 「え」 私は、さくらの手を掴んだ。 「さぁ、行こう?」 さくらは、驚いた様に目を開いた。 「うん」 さくらは、嬉しそうに笑顔を浮かべた。 そして、私はさくらの手を握ったまま 足を一歩前に踏み込んだ。 私の命が尽きるその時まで・・・ 人は、いつか死ぬ。 それから、逃げることは出来ない。 だからこそ、人は幸せを望み。 短い人生を一生懸命に生きていくのだ。 ああ、いい人生だったと笑って逝く為に 「ねぇ、さくら・・・」 「うん、なに?」 「・・・・・・ありがとう」 「え?」 「なんでもない」 「えぇ、気になるなぁ」 「ただ、私は、幸せというだけのことだから・・・」 ------------------------------------------------------------------ 後書き はじめまして、無銘三代目と言うものです。 といあえず、最後まで読んでいただきありがとうございます。 さて、この話について一言二言 一応 この物語の主人公は『うたまる』です。 ・・・というか、『うたまる(死に神)』が主人公です。 えーと、実は私がこのD.Cの中で一番好きなキャラは『白河 ことり』で、この人を主人公にすると決めていたのです。 『白河 ことり』は、もちで朝倉の恋人役で決定していたのですが・・・内容は? と、考えていたらふと『白河 ことり』が死に神に狙われるという話を思いつき。 なら『うたまる』を『死を謳う 輪廻を司る者(死に神)』にしてみようという事になり、今回の物語を作っていきました。 ・・・・・・そして、今。 最初の主人公『白河 ことり』が『うたまる』が主人公に変わってしまったのです。(涙) まぁ・・・『うたまる(死に神)』は気に入っているのですが・・・ あ、気付いていない人はいないと思いますが、一応書いておきます このものがたりに死に神がふたり出てきましたが、あの二人は親子です。 ついでに言うと、戻ってくるという約束は、この二人が交わしています。 それでは、これで後書きを終了とさせて頂きます 「では、またどこかで逢いましょう」 11月20日 無銘三代目