前書き はじめまして、もしくは お久しぶりです 無銘三代目です。 この話は、前作『さくらの道』の補足として、書こうと思っています。 ですから、『さくらの道』を読んでいないと話の展開についていけないかもしれませんので、よければ、前作を読んで頂ければ嬉しいです。 それでは、最後まで読んでいただけることを祈りながら、前書きを閉めさせていただきます。 追記 わかんない人がいるかもしれないので記載します。 幼少の頃『萌先輩』を、助け死んだ。少年の名前は『啓一』で、通称は『敬君』です。 平成17年11月26日__春は、冬とは違い 段々と日が沈みだすのが遅くなっていく時期だ。 だが、転校生が転校してきた。 今日は普段より、日が暮れるのが早く そして、夜の闇の密度が濃く感じた。 俺は、なぜか眞子と一緒に帰っていた。 二人の間には、会話はない。 ただ、黙々と夜の桜並木を歩いていた。 ……なぜ、一緒に帰っているのかというと ことりに、お姉さん(暦元先生)と用事があるからと断れ、杉並は転校生を調査すると言い出し、 一人で帰るかと下駄箱に向かう途中。 眞子に話しかけられ、一緒に帰らないと言われ まぁ、断る理由もなく俺は、その申し出を受けたからだ。 「…………最近、お姉ちゃんの様子がおかしいの」 眞子がそう言ったのは、桜並木を抜けた時であった。 「萌先輩が?」 萌先輩……か、懐かしい名だ。 目を瞑れば、思い出す。 ポーンポーンという木琴を打ち、目を瞑って(もとい眠って)登校する姿は未だに鮮明に思い出すことが出来る。 よく、屋上で鍋を食べさせてもらったのはいい思い出だ。 卒業してしまって、会う機会はだいぶ減ってしまったけど……いや、会わない様にしていた。 あの頃から一度たりとも会ってはいなかった。 会う事に、怖気ついていた。 「うん、いつも寝ているの」 「………薬か?」 眞子は、黙って頷いた。 萌先輩は、幼少の頃 大切な友達を目の前で、失った。 その影響で、萌先輩は睡眠薬を飲んでいた。 夢の中で、その人に出会えるからと理由から……… 俺は、『魔法の桜』が枯れる前日 その事を『他人の夢』を見る力で、知ってしまった。 __たくさんの車…ざわめき…飛び出した少女…金属音…ゴムの焼けた匂い…血だらけの少年…好奇の瞳…救急車の音 そして その傍らで泣く少女の夢を そして、その夢を見てしまった__3日後。 萌先輩は睡眠薬を致死量飲んだ。 体内の洗浄をして命は取り留めたが………自殺したということに変わりなかった。 そして、俺はショックのあまり真っ青になっていた眞子をほっとく事が出来ず 否、夢を見てしまった。 俺は、無関心でいる事ができなかった。 そして 意識を取り戻した萌先輩と話をした。 どうして、こんな事をしたのですか? 萌先輩は答えた。 思い出せなくなった…と 大切だった人の事を思い出せなくなった 夢の中で、出会えた人に だから…たくさん飲んだら、会えるかなって そう言って、萌先輩は涙を流した。 でも、涙を流す瞳の奥は、なんの感情も浮かんではいない。 まるで人形の瞳を、硝子細工の瞳が……不気味だった。 俺は、その時 ただ自分の無力を噛締め ただ ただただ 眞子が悲しむとか、先輩死なないでください……そう言う事しか出来なかった。 当たり前な事しか言えなかった。 そんな言葉じゃ、萌先輩の心には届かないという事は理解出来ていたのに 萌先輩は、そんな俺に 分かっています、眞子ちゃんに怒られたから… そう答えた。 そう言ったのだ。 そして、退院した。萌先輩は元気そうだった。 表面上だけは……元気そうだった。 「・・・また、見たんだって、『啓君』の夢を」 「まるでLaudatores Temporis Actiだね」 「「え」」 俺と眞子は、同時に後ろを振り返った。 「こんばんは、水越 眞子さん・・・朝倉 純一君」 そこには 「希さん?」 眞子が、盗み聞きされたと思ったのだろう。 少し怒った様な声で、声の主の名を呼んだ。 「はい。覚えていただき、感謝の極みです」 浮世離れしていて、生まれたての赤ん坊の様に可憐で 大人の女性の様に魅了的な顔をした、少女が微笑を浮かべ立っていた。 腰に届くくらい長い、漆黒以上に黒い髪。 対照的な、陶磁器の様な滑る肌。 蒼き瞳。 首には、鈴のアクセサリーを身に付けていた。 そいつは 今日、転校してきた少女 名を、芳乃 希という。 だが、雰囲気が違った。 学校にいた時の、風前の灯の様な儚さはなく。 彼女の体の回りには、凍てつく氷の様な闇を纏い 澄んだ鈴を思わせた声は、 「なによ、そのらっらうだとりす・てんどん・あ___ 「ラウダトレス・テンポリス・アクタイ」 希は、眞子の言葉を遮り言う。 「本来の意味は、過去を称える者達という意味」 低く、まるで冬の湖の様な声を思わせる声に変わっていた。 その声で淡々と言いながら、一歩ずつこちらに足を運んでいる。 「過去崇拝者・・・過去を絶対という信仰を持った達の事。 私を、それを『過去しか見る事の出来ない人間』という意味で使っているけどね」 希は、そう言うと静かに、まるで滑るように俺達の間を通り過ぎ 暗闇の中に消えていった。 「なに、あれ?」 眞子が、唖然とした顔で呟いた。 「不思議ちゃん?」 俺は、その言葉に 「さぁ」 肩を竦めた。 否、表面上だけの行動だった。 俺は、震えていた。 希が、通り過ぎ時 俺だけに、聞こえる声で『死に神』が呟いた。 「君に、その人は救えない」 その言葉が、なんども何度も何度も__ 『さくらの道:第二章』
「うたまる〜。どこにいるの?」 「………ここに、います」 私は、そう言ってさくらに見えるように屋根から身を乗り出した。 「うわ!危ないよ」 と、本当に心配そうにさくらが叫んだ。 「大丈夫です」 私は、そう言い屋根から飛び降りさくらのまん前に飛び降りた。 「ほら」 両手を広げながら、飛び降りた私を さくらが、笑いながら猫というより烏みたいだねと言った。 私は、その言葉に苦笑しながら 「なんの用ですか?」 そう言った。 「今日。どうだったかなって、思って………」 「担任だから大体分かると思うのですが?」 「うたまるの口から、聞きたいの」 そう言って、頬を膨らますさくらに私は、微笑した。 その姿は、本当に子供のようだったから……… 「………そうですね」 私は、静かに ___ここ最近の記憶を思い出しながら、言葉を繋いだ。 あの魔法のさくらでの出来事以来。 私は 死に神ではなく、うたまるとしてではなく、一人の人間としてこの島で、暮らす事になった。 衣食住は、さくらの家に住む事で有無を言わせず決定していていたので、それに関する心配は最初からなかった。 だから、最初に悩んだのが、自分の名だ。 私に、人としての名はない。 『死を謳い 輪廻を司る者』という記号と 確かに『うたまる』という名はあるが、流石に人間の格好をしているのにこの名は使えない。 というより、『うたまる』を知っている人間に 私は『うたまる』ですと言えば、変な顔をされてしまう………やはり、人の名ではない。 もし、風見学園に行くのであれば、ちゃんとした名(この言い方は、好きじゃない)が必要だった。 だから私は、人間としての名を考えなければならなかった。 といあえず、さくらの親戚として通うので、氏名は『芳乃』で決定していた。 なら苗字はと、考えること30分後。 突然、さくらが 「猫だから、ドラ■もん?」 これは、コンマ一秒で却下にし さらに悩み10分。 『芳乃 希(よしの のぞみ)』という名にした。 希望を……このさくらの道をいつまでも忘れないようにと 自分の名にした。(自分に刻んだ) __そして、私はこの風見学園に転校した。 「始めまして、芳乃 希といいます。今日から皆さんと一緒に、勉学をがんばりたいと思っています………よろしくお願いします」 私は、全員に聞こえるように言った。 教室を見渡し、一人一人の顔を見た。 その中で『朝倉 純一』が、微笑んでくれた。 『白河 ことり』が、微笑んでいた。 なぜか『杉並』がふっと鼻で笑っているのが見えた。 「・・・よろしくお願いします」 私は、そう頭を下げ挨拶した。 ちらりと、担任であるさくらの顔を見ると、月の様な優しそうな笑みを浮かべていた。 私には決して浮かべることの出来ない笑みだと、私はそう思った。 昼休み 私は、質問攻めから逃げる為。 屋上に足を運んだ。 昼飯である。 菓子パンを3つ抱えながら、屋上の扉を開いた。 ぎぎぃぃという、少し錆付いた音と共に、目の前に青い空と__ 「……あ」 先客がいた。 「あれ、希さん。どうしたんですか?こんな所で」 『白河ことり』と『杉並』と『朝倉純一』と『工藤 叶』が円形に座って食事を取っていた。 ちなみに、並び方は 『白河ことり』→『朝倉純一』→『杉並』→『工藤 叶』→『白河ことり』だ。 「あれ、希さん。どうしたんですか?こんな所で」 『白河 ことり』が、一番速く私の存在に気付きそう聞いてきた。 「ふむ。大方、質問攻めから逃げてきたのであろう」 「…はい、そんなところです」 私は、そう答え 「………お邪魔してもよろしいですか?」 「はい、いいですよ」 白河 ことりは、またそう言い微笑んだ。 まるで、太陽の様な笑みで、私はその眩しさに目を細めた。 そして 私は、了解を得たので 杉並と工藤叶の間に座った。 そして、私は皆といろんな雑談を交わした。 皆と一緒に、食べる食事は、すこし普段より美味しかった。 「ところで、希嬢」 と、当然、杉並が私の肩に触れた。 刹那 ビック 私の脳裏に、あの地獄の様な___ 「シァァァァァアァァァァァ」 ザクザクッザザザク 「……だから、杉並君。顔に切り傷があったんだ」 「………よく苛められていたから、つい」 閑話休題 そして 私は、下校時に聞いてしまった。 『萌先輩』の事を語った。 「そう」 さくらは、苦虫を100匹噛み砕いたかのような顔をした。 一瞬だけ、言わなければよかったと思った。 でも 言わないといけない言葉だ。 「『魔法』を使った影響、やっぱり出ちゃったか?」 そう、あの桜は願いを叶えるための桜。 だから、『萌先輩』が見たいと思った夢を見せてしまった。 さくらは、悲しそうに空を眺めた。 空には、もうすぐ満月になりそうな月 すこし欠けた月が、私達を照らしている。 「過去を思い、過去に縛られ、過去を夢見るもの……か」 私は、その様子を胸の痛みを耐え、見ていた。 ………私が、悪いのだ。 私が、闇に堕ちてしまったから さくらは、『魔法の桜』を咲かせる必要なんて__ 「自分を責めちゃだめだよ。『うたまる』」 さくらが、唐突にそう言い優しい笑みで、私に言った。 「責めちゃだめ……か」 私は、そう自分にだけに聞こえるように呟き 「でも、そのままじゃ__ 『死に神』が、宣告した。 あの人は、このままじゃ『自殺』して死んでしまうと『死に神』は、そう言った。 その言葉に、さくらは私の顔を見てから もう一度、月を見上げ笑った。 「大丈夫だよ。ヒーロー(救うもの)は必ず来るから」 私は、その言葉にため息を吐き 私は隣の家を見た。 正確には、2階の一室を。 さっき、屋根の上にいた時に付いていた筈の電気が何時の間に消えていた。 「……………」 「………………」 俺は、電気を消した。 明日は、眞子と約束した。 萌先輩に会うって、だからもう寝ないといけない。 カチカチカチカチ 漆黒の闇の中 時計の音が耳障りに聞こえた。 (俺に何が出来るのだろうか?) そう思いながら、俺は何時の間に眠りに落ちていた。 そして、俺は見た。 カラカラカラという音を立て、窓が開き 「……………」 漆黒のローブ 骨で出来た鎌を持った 少女の顔は逆光で見えない(だが、笑っていると感じた)。 少女が無言で俺を、見下している夢を 背中に月を背負った。 その姿を綺麗だ、そう思った。 前編終了 「水面に浮かびし月」