「そうだな、正直にいうと君を放っておけなかった。」 「・・・え・・?」 ・・・この人はなに、を言って─いるんだ、ろう。 出合って間もない、いきなり自分を斬りつけようとした相手に、この人は─ 「まあ、とにかく俺は君が何をしてるのかしらないけど俺に出来る事があれば力になりたいな、っておもったんだ」 バカだ。 目の前にいる彼は本当に莫迦だ。 私が逆の立場ならば、絶対にそんなことはいわない。 本当に・・・ばか・・だ。 「・・あ─れ?」 おかしいな、なぜか涙が流れる。 かなしくなんてない。 ・・・いや、私の10年間の修行の成果をなんだかしらないような男にやぶられたのだから、悲しくないというのは嘘か。 でも、悲しいのとはなんだか違うみたい。 「あ・・その・・えっと・・・」 あ─、しまった、男の人の前でこんな顔みせちゃだめよって、お姉ちゃんがいってたっけ。 「あ、その、ごめんなさい、ちょっと目に─ゴミがはいって」 「あ、そっか、俺またなんかしちゃったのかとおもったよ」 とりあえず、涙を拭う。 呼吸を落ち着けないと。 スーハー、すーはー。 「それで、貴方。私に協力するですって?」 「ああ、俺にできることならなんでもするよ。」 なんて・・こと。 私は今まで1人で生きてきた。 お姉ちゃんとは10歳のころに別れてそれっきりだ。 協力?手伝う? ハ─ なんて可笑しい、わたしのこの生活のなかで、協力だなんて、必要なかったのだから。 ─本当は誰かに助けてホシカッタ。 だから、この目の前の彼を危険な目にさらすわけにはいかない。 ─タスケテ それに私は一人でも十分やっていける ─それは、とてもヒドイ嘘ダ それに今回は負けちゃったけど稽古すれば─ ─あの秘剣にはカナワナイ さっきから─五月蠅い。 ─本当は助けてほしくてしょうがないクセニ。 そんなことは、ない─ ─素直になりなヨ。 うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい─! 「わ、わかったわ。貴方にも協力してもらう。─ただし、お互いに不干渉ってことでいいならね。」 ・・・頭がとても痛い。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 彼女は俺が放った秘剣のせいだろうか。 酷く、苦しんでいる。 ・・・くそ、俺の馬鹿野郎。 「わ、わかったわ。貴方にも協力してもらう。─ただし、お互いに不干渉ってことでいいならね。」 落ち着いたらしい彼女が言った。 「わかった、ただ協力するにしても俺が何をすればいいのかがわからない。そこらへんの話を─そうだな、君につけてしまった傷の治療もひつようだし、とりあえずうちへいこう。」 「ええ、そうね・・」 どこか苦しげな彼女をつれて自宅へ向った。 --------------------------------------------------------------------------------------------------------- 屋敷の前につく。 さあ、着いたよ。 「・・え?」 さ、入って入って。 「ちょっとまってよ、貴方の家ってここなの?」 ・・・ああ、そうか。 彼女が驚くのも無理ない。 もう俺がここにすんでから暫くたつけど、どこかまだ自分の家だという実感がないのだから。 「まあ─ね。さ、遠慮せずにどうぞ」 彼女を先導する。 後ろで「遠慮もするわよ」と聞えたようなきがした。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------ 「これでよしと」 俺は彼女の足に丁寧に包帯を巻く。 まあ、元は俺のせいで怪我をさせてしまったのだが・・。 「あの、本当にごめん、自己防衛とはいえ、女の子に怪我をさせるなんて俺は最低だ」 「なにいってるのよ、そんなのあたしが斬りかかったんだから貴方がそんな気にする事じゃないわよ、それより私のほうこそ本当にごめんなさい」 「え、いや、その・・・」 ・・・うまく言葉が続かない。 「で、その、俺は何を協力すればいいのかな?」 ・・うーん、と彼女は考え込む。 「じゃあ、いうけど・・」 「うん」 「私をここに泊めて」 「─なーんだ、そんなこと・・・」 ─って 「えええええええええええ─!」 「それと出来れば3食付で・・もうキノコの類は食べあきたわ」 「えっと、俺は、いいんだけど、ほかに誰もいないし、男と女なわけだし─」 ごにょごにょと口をつまらす。 「あ、え、えっと、そ、その・・わ、わたし信じてるから!」 「─」 お互いに沈黙。 それがどれほど続いただろうか、彼女のほうから口を開く 「えっと、だめ・・かな?」 ─勝敗はここに決した。 「ああ、いいよ、部屋はいくらでもあるから好きなところを使ってくれ」 ・・・部屋数だけはムダにあるのだ、我が家は。 「ああ、そうだろくに手入れされてないからそこらへんは自分でうまくやってくれ。家具とか何か足りないものがあれば他の部屋からとってきて移しても構わないから。」 「あいよ」 というと彼女はどこか嬉しそうに階段をのぼっていった。 「・・・さて」 ・・・もう夕方か。 なんだかんだで昼を食べるのを忘れてたから、夕食は腕をふるってつくらないとな。 上でどたばたと音がする。 きっと家具の移動でもしているのだろう。 夕食の買い物にもいかないといけないのだが、先に彼女の家具移動を手伝ってからでもいいか。 女の子1人じゃ、大変だろうし。 「おーい、何か手伝うことはあるかい?」 階段をのぼりながらよびかける。 「あ、ちょうどよかった、この化粧台おもくってさー」 「あいよ」 彼女が運んでいたのはフランスの貴婦人がつかうような化粧台だった。 へぇ、彼女もそういうの、やっぱ気にするんだなと当たり前のことを思った。 「この部屋のね、造りはいいんだけど、家具がまったくなくってさ、だからそれらしいのを拝借してるんだけど」 「へぇ、こりゃすごい。どこぞのホテルのスウィートルーム並みじゃないか。」 ・・・俺の家にはこんな物もあったのだと、別の意味でも関心した。 「それにしても、すごいわね、貴方の家。宝の宝庫のように高そうな家具ばっかりね」 「まあ、俺はあんまごちゃごちゃしてるのは嫌いだから部屋にはベットと机と、それぐらいしかないんだけどね。」 ・・・間違っても彼女が現在建設中(?)のようなゴージャスな部屋ではないことは確かだ。 「風呂は露天風呂が1つ。被っちゃうと大変だから入る前は声をかけてくれ」 「へー、自宅に露天風呂だなんて洒落てるじゃない。気に入ったわ、最高よ」 そうだな、豪華な家具にも部屋にも興味を持たない俺が唯一気に入ってるのは 露天風呂だな。 「脱衣所にマッサージチェアーなんて洒落たもんも置いてあるから、汗だくになってるみたいだし、お風呂にでもはいってゆっくりしててくれ。俺は買い物にいって夕食をつくるからさ。」 「な、なんだかそこまでされると悪いね・・」 「いいって、気にするなよ、1人分作るのも2人分もさほどかわらないって。じゃ、できたら呼ぶから、ごゆっくり。」 今夜はスタミナをつけるって意味でも焼肉にしよう。 そうとなれば一番上等な肉をかってきてやろう。 俺はいきつけの肉屋へむかった。 -----------------------第4話へ続く 『星に願いを─月下編─』第3話