『星に願いを─月下編─』第1話

──見上げれば空。 ──空いっぱいの星。 ──ああ、今夜も星が─きれいだ。 ---------------------------------------------------------------------------- 気が着けばそこは森。 星の明かりだけが俺を照らし、俺を生かした。 チュンチュン‥‥チュンチュン‥‥ 鳥の泣き声で目が覚める。 きっと鳥の泣き声ですがすがしく目覚める事ができるのは俺ぐらいのものだろう。 だってそう・・・ 「この広い屋敷に俺1人だもんな・・・。」 誰にいうわけでもなく漏らす。 キッチンへ行き、昨日の夕食の残りのカレーライスをお皿にもったご飯のうえにかける。 「うん、やっぱりカレーはうまいな」 人気がないせいだろうか。最近一人ごとが絶えない気がする。 朝食をすませ鞄をもち、玄関をでる。 "水節恭介"とかかれた表札をあとにする。 そう、俺はこの屋敷の家主、水節恭介(みずせつきょうすけ)なのだ。 ---------------------------------------------------------------------------- 遠くから声がする。 オーケー、俺はなにも聞いてない。 『きょうすけ〜〜まってぇ〜〜』 ─何もきいて─ない・・。 『きょうすけ〜〜無視しないでよーー!』 ・・・・。 「だー!もううるせーな!恥ずかしいから大声で叫ぶなっての」 「何?私は挨拶しただけだよ?」 この五月蝿い女は渡利花穂子(わたりかほこ)。 中学時代からの腐れ縁ってやつだ。 「挨拶するのって当たり前のことだよね?」 ──神サマ、こやつは何か根元的なことがおかしいデス。 ------------------------------------------------------------------------------ 『・・・であるからして・・』 お馴染みの校長の"ありがたい"お話しが終る。 そう、明日から夏休みなのだ。 「夏休みといっても予定もなにもない俺にとっては・・・」 そう─あの広い屋敷に一人、一日中ゴロゴロするしかないのだ。 「それはそれで虚しいよな・・」 「じゃ、元気でな!」 クラスメイトが言う。 「ああ、お前もな」 さて、これで屋敷に帰るしかなくなったわけだが・・。 そうだな、たまにはどこかに寄って帰るのもいいのかもしれない。 さて、どこへ行こうか ------------------------------------------------------------------- 「たまには裏庭で物思いに耽るのも悪くはないな。」 ─重い扉を開ける。 明けるとそこには人の気配もしないような、草で覆われた─いわば森になっていた。 『何者っ!!』 大きな声がした。 が、その大きな声とともに何かが俺をめがけてくる。 俺はとっさに右へ跳んだ。 『へえ、私の一撃を交わすなんてね。何者かはしらないけどこっちも本気でいかせてもらうよ。』 ─まて、。 わけがわからない。わけがわからなすぎて分からない。 だが、体はこのままではきっと無事ではいられないと悟ったのか、じり─と足を 後ろにひいていた。 『奥義─月下波瀾』 「な─」 自分の目を疑った。 ─いや、嘘だとおもいたかった。 彼女が俺にむけてる刃は間違いなく─ そう、真剣だった。 いくつもの刃が見える、これが彼女のいう奥義か。 確かに─くらえば即死だ。 しかし、これぐらい俺にでも─。 『え?』 この声はどちらのものだったのか。 彼女が俺にむけた刃は停止していた。 ─いや、俺が停止させていた。 この少女がいきなり俺に斬り付けてきたことも不明。 俺がなぜ彼女の剣術をみて"これぐらい俺にでも"と思ったのかも不明。 そして何より、なぜ俺はくらえば即死だとおもったこの剣を停止させているのか。 「─まいった、降参。」 背は俺よりも高い。髪は長く紐で結んでいる。 「私の負け・・、─その、勝手な申し分だけど痛む事のないようにお願い。」 というと彼女は俺に刀を差し出す。 その刀はなぜか折れていた。 ─わけが、わからない。 ─頭にくるほど、わけがワカラナイ 「ちょっとまってくれ、いきなり襲われて、いきなりそんな事を言われてもわけがわからない。」 「─え?」 「俺はたださ、日向ぼっこでもしようと思ってやってきただけなんだけど─」 ─さすがに、物思いにふけにきただなんて、言えない。 まあ、殺されかけた相手にそんな恥じらいの感情は必要ないのかもしれないが・・・。 「そんな─じゃあ、いったいどこからここへ?」 「どこからって、学校の扉からだけど。」 「─」 少女は立ち上がり体についた泥をはらいはじめた。 「あの扉には結界がはってあってね、普通の人だと扉をあけることはおろか、扉の存在にすら気付かないんだよ」 ─結界、といわれても普通ならば理解はできないだろう。 だけど俺、水節恭介はどうかしているのか─、それがどういう事であるのかを理解した。 「─なるほどね」 「へぇ、結界って言われてそのまま鵜呑みにするなんて、貴方やっぱり普通の人間じゃないわね?」 ─何をいっているんだ 「俺はただの高校生だよ。なぜこんなことを疑いもせず理解しているのかは俺もよくわからないけど。」 「まあ、いいわ。それよりごめんなさい。結界を破って入ってくるから"敵"かと思っちゃった。」 「なんだよその敵って。」 「貴方には関係のないことよ。」 「な─」 ─殺されかけて、わけのわからない事を言われて。 ─それで、関係ないだと・・。 「おい─」 「貴方は・・関わってはいけない世界なのよ─・・。」 と彼女は一瞬悲しげな表情をみせて消えた。 「なんだってんだ・・・」 俺はそんな不思議な少女とであった裏庭(現場)をあとにした。 「はぁ、今日はつかれたな。」 自室で溜息をもらす。 まあ、明日から夏休みだし、いいか。 さて、明日はどうしようかな -----------------------第2話へ続く