ドアをあけると恐ろしい事態になっていた。

『純一〜、これってなんですか?』
「ちょっと、アイシア、ダメだよ!」
アイシアとさくらの声がする。

「どうしたんだよ、いった・・」

・・・・
みなかった事にしたい。
もし、こんな所をことりに見られたら・・・

「って、そうだことり!」
「・・・もう既に居ちゃったりしますよ」

「ねえ、純一、こんな裸の女の人ばっかりの雑誌をみて何をするんですか?」
そういってアイシアが手にしているものは紛れも無い俺のエロ本!
ことりと付き合いはじめてから、ずっと隠してたのに・・。

「こ、ことりこれは誤解だ!俺はことりと付き合いはじめてから
 この本にお世話になったことなんて一度も──」

「くすっ、もう、だめじゃないですか。こういうのはちゃんと処分しとかないと
 しかもさり気なく恥ずかしい事いわないでくださいよ」
そういってことりがアイシアから
『これはアイシアちゃんが読むような本じゃないからね』といって本をとりあげる

「へぇ、純一君ってこういうのが好きなんですかぁ〜」
そういってことりが手にしているのは『秘蔵!メイド大全集』だった。

もうどうにでもしてくれ・・・。

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そして俺とことりはさくらとアイシアのために料理をする。
「純一君は、座ってていいですよ」とことりは言うのだけど
「愛の共同作業をしたいだけさ」というともうっ、と言いながらも俺に仕事をくれた。

しかし、歓迎会とはいえケーキまで手作りで作るとは・・・
さすがことり・・・

「純一君、スポンジの様子はどう?」
俺はことりに言われてオーブンを見る。

指で触って見る。
「う〜ん、あと5分ってとこかな」
スポンジは膨らんではいたけど、まだ粉汁っぽかった。

「じゃ、しっかり見ててくださいね」
「うぃうぃ」

こうして俺がオーブンを見張ろうと椅子をもってきたところ・・・
『へぇ、じゃあことりと純一は結婚するんですね?』

ブーッと噴出しそうになるのをなんとか堪える
「ごほっ、ごほっ」
案の定ことりは咳ごんでいた

「お前ら・・・一体なんの話をしてるんだ・・・。」
「あはは・・・ごめんねお兄ちゃん、アイシアが・・・」
「だって、2人は一緒に住んでるんでしょう?」
とアイシアが俺を見上げて言う。

「まあ、今はな・・。ここ最近色々お互い変化があったからさ・・。」
「実はそのことなんだけど・・・」
さくらが重たい表情で言う。

俺とことりは一旦、料理を中止してさくらの話を聞くことにした。

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まずは、魔法の桜を再び咲かせたのはアイシアだということ。
そのアイシアが魔法使い(見習い)だということ。
アイシアのお婆ちゃんのこと。
芳乃のばあちゃんを訪ねてきたこと。
そして──

「ふたりに訪れた変化。その原因はボクなんだ・・・。」
「え?」
俺とことりが同時に発した。

「まず、白河さんの頭痛の原因から。
 ボクはおにいちゃんのことが好き。だからそんなお兄ちゃんの彼女の
 白河さんを、心のどこかで憎んでたんだ・・・。だから・・・。
 そして今度はお兄ちゃんの記憶喪失の件。
 これはそんな白河さんを必死に看病してるおにいちゃんをみてたら・・・」

「もういい、それ以上、言うな」
俺は自分自身でどんどん自分を追い詰めているさくらを見かねて言った。
「それはさくらのせいじゃ──」
そんな俺の言葉を遮ってことりが喋りだした
「それは、さくらさんのせいじゃないですよ。」
それをきいたさくらは「え?」とでもいいたそうな表情をしていた。

「こんなことを言うのも何なんですけど、私達、お互いに異性からモテるんですよ
 だから、そんな風に想ってるのはさくらさんだけじゃなくて
 他の色んな人もだから・・・。
 それに、人を好きになって、嫉妬するのって悪い事じゃないと思いますよ?」
ニッコリと、まぶしいほどの笑顔でことりが言った。

そんなことりを見て俺はなんだか胸がキュンとした。
ムネキュンってやつ?
と、くだらない事を考えているとさくらがことりに飛びついていた

「ごめん、ごめんね白河さん」
「ううん、いいのいいの」
ことりは優しくさくらの頭をなでる。
アイシアの方をみると、アイシアもうれしそうに微笑んでいた。

「でも、さくらが二人の事を強く願う事で“一時的に”
 二人の呪いは消え去りました。
 でも、また再び同じような事が起こらないとも言いきれません・・・。」

「・・・・」
3人が沈黙する。

また──俺の記憶が、ことりの頭痛が・・・。

「・・・枯らせてしまえば・・。あの桜の木を枯らせてしまえば・・」
沈黙を破ってことりが言いづらそうにいう。
確かに、あの桜の木さえ枯れてしまえば・・・俺やことりが悩む事もないだろう。
が、しかし、皆の幸せを願って、遠い国から訪ねて来て・・・
“皆を幸せにしたい”そんな少女の儚い想いは何処へいってしまうのだろう?

“人を幸せにしたい”そう想うことに何の罪もなければ
中々普通の人が抱けないような事を胸に抱いているこの少女の想いは──

“他のみんながが幸せ”なことが“幸せ”なアイシアにとって
あの桜の木を枯らせるなんて──

「・・・それは、できません。魔法は皆を幸せにするもの!
 魔法で人が不幸になるなんて、そんなこと絶対にありえません!」

「アイシア・・・」
さくらがなだめる。
「アイシアちゃん・・・」
ことりも申し訳ないような表情だ。

「アイシアのいう事は正しい。」

「え?」

俺がそういうと全員が驚きの表情で俺を見上げる。

「魔法は人を幸せにするもの。確かに使い方によっては人を不幸にしてしまう術なのかもしれない。
 でも、アイシアはどうだ?そんな悪い魔法使いにはすくなくとも俺は見えない。
 願う側・・・つまり俺達に問題があるんだよ・・・」

婆ちゃんから授かった俺の和菓子を生む魔法。
これが人を不幸にするための物だなんて思いたくも無いし
俺はこの唯一の魔法で色んなやつの笑顔をみてきた。
ことりだってそうだ。

「だから、俺がなんとかするから。」
そういって俺は手を握る。
桜餅をイメージした。
さくら、アイシア、ことりに1つずつ桜餅を渡すと俺は玄関を出た。

答えは既に見つかっている。
いや、前から俺が願っていた事。
色んな不安に駆られて無視しつづけていた事。

それは──

第10章に続く。