「・・ただいま、お兄ちゃん♪」
目の前には俺の探していた人物が立っていた。
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俺は久々の再会の余韻に浸ることもなく、言った。
「さくら、戻って早々で悪いんだがお前に話が─」
するとさくらは一瞬、ことりの方をむいたかとおもうと再びうつむいて

「・・・白河さん、やっぱり能力が戻っちゃったんだね・・」
「・・・」
ことりが力なく頷く。

「実はね、ボクも初音島の桜がまた咲いたっていうから急いで戻ってきたんだけど─」
ちょっと遅かったみたいだね。とさくらが本当に困ったように言う。

「・・・大体分かるけど、お兄ちゃん、話って何かな?」
俺達はとりあえず、さくらの家へ行き、今までの事情を話す。

「なるほど・・元々人の心がよめるなんて異常な事だったんだよ・・。
でも白河さんは当初、それに慣れてしまった。それが当たり前だったからやっていけた・・。
でも今は違う、人の心が読めないのが当たり前で、そうやって人付き合いをしてきた
だから今、本当はあるはずのない能力が再び戻って白河さんの精神に負担をかけてるんだね・・」

だから昔も頭痛はしてたでしょ?とさくらがいう。

「・・・ええ」
ことりが小さく頷く。

「・・・さくら、また前のようにあの桜を枯らせてくれ・・。」
そう。さくらが以前したように
─あの桜を枯らしてしまえば、魔法の力はなくなる─。

「・・・それが、無理なんだ・・」
さくらがうつむき加減に言う。

─無理・・?

「・・・あの桜の木自体に強い結界が張って合って・・・」

「そんな・・・・」
途方にくれる、とはまさに今の俺のこの状況のような事を言うのだろう。
唯一の頼みの綱だったさくらにもどうしようもできないこの状況を
俺は、
どうにかできる・・のだろうか・・?

「・・・ごめん、お兄ちゃん、力になれなくて・・」

「芳野さんは何も悪くないよ、だから気にしないで・・・ね?」
ことりが俺より先に言う。

確かにさくらは悪くない─。

「さくら・・あとは、俺がなんとかするよ、だから気にしないでくれ」
「うん・・」

そうして俺らはさくら邸を後にした・・・。

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俺はことりをいつものように家へ送り届けた後、一人考えていた
さくらでもどうしようもできない。

桜自体に張られている強い結界。

この魔法の力に、和菓子を作る能力しかない俺が、どう太刀打ちできるのか。
─いや、絶対に、絶対になんとかしなければならない。

そんな事を考えていると、いつのまにか俺の意識は闇へと消えていった・・。

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─桜。

わたしの始まりの場所─。

─桜。

わたしの心が唯一休める場所─。

─枯れないで。

─かれ、ないで。

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ジリリリリ・・・。
目覚ましの音で現実に引き戻される。

桜が再び咲いたせいで、また人の夢を見てしまったようだ。
・・・今のは一体誰の夢だったのだろう。

ズキッ─

・・こまった。
ことりだけではなく、俺まで人の夢をみると、頭痛がするようだ・・。

俺とことりはいつもは別れる前に必ず次に逢う約束をしているのだが
─昨日はそれがなかった。

それが、何を意味するのか・・。

「・・俺と話をしていても辛いってことだよなぁ」
改めて言葉にして見る。

それはそうだ、ことりは俺がことりを心配すればするほど
俺の気持ちを直に読み取ってしまうのだ。

八方塞とはこのことだろうか。
俺がどうにかしようと思い、考えれば考えるほどに
結論は見出せず、

絡まってしまったコードのように深く、絡んでいく。

「・・・うーむ・・。」

俺は気分転換に外へでてみることにした。

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商店街。
相変わらずこの小さな島でも、唯一、人がいっぱいで活気にあふれている場所。
1人1人に目的があって、何かを求めて、歩いているのだろう。

そこに、何の目的もなく彷徨っている輩が1人。

そう、俺だ。

まあ、ウィンドウショッピング(財布と相談だが)もたまにはいいだろう
俺はいつも隣にいるはずの人がいないことに何かを感じながら本屋へ入った。

本屋に入ったのはいいが、特に買うものは決めていない
(・・そもそも本屋をウィンドウショッピングというのだろうか・・?)

「・・いよう、朝倉、朝倉もヌーを買いにきたのか?」
と週刊雑誌を読んでいた俺の後ろから声が聞こえる。

「・・・お前と一緒にするなよ」
ちなみに、ヌーとはこの男、杉並が読んでいるオカルト雑誌だ。

「・・”読んでいる”とはなんだ、愛読しているといってくれ」
「・・・人の心にまで突っ込んでくるな、それに、どっちも意味は一緒だろ」
とじゃれあって(?)いると杉並の表情が変わる。

「・・・ところで・・白河嬢と、なにかあったのか?」
──案外、こいつはこういうところに鋭い。

「・・・その様子だと、何かあったみたいだな」
杉並が珍しく苦笑いしながら肩を竦める

「・・ああ」
自分でもびっくりするぐらい、声の張りがなくなっていた。
そうだ──俺は、ことりを─・・

こんなところで立ち読みしている暇なんて、ないじゃないか・・。
「・・悪い、杉並、俺ちょっと用事ができた」

俺はそういうと店を出た。
何か特別解決策が思い浮かんだわけでもない。

ただ、ことり、ことりが隣にいないという事が
こんなにも苦しかったなんて──

俺は、“あの場所”を目指して走り出していた──


第4章へつづく